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「睡眠中の視覚イメージの神経デコーディング」
国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、睡眠中の人が見ている夢を脳活動パターンから解読することに成功したと発表した。脳活動の機能の解明や、脳活動でコンピュータなどを操作するブレインマシンインタフェースなどへの応用が期待できるとしている。成果は米科学誌「Science」オンライン版に掲載される。
成功したのはATRATR脳情報研究所・神経情報学研究室の神谷之康室長らのグループ。3人の被験者が脳波計を装着してfMRI装置の中で眠り、脳波をモニター。夢を見ることと強い関連があることが知られている睡眠脳波のパターンが生じたタイミングで被験者を起こし、夢の内容を報告してもらった。夢の内容を記録し、再び被験者が眠り──ということを3人とも約200回ずつ繰り返し、夢の報告とそれに対応する脳活動データを大量に取得した。
夢の報告に現れた、物体や風景を表す単語を抽出し、言語データベースを使って解析。夢の報告文を「本」「車」など約20の物体カテゴリーの有無を表現するベクトルに変換した。
また物体カテゴリーに対応する画像をWeb上の画像データベースから収集し、これを人が見た際の大脳視覚野の脳活動パターンを使い、物体と対応する脳活動を解読(デコード)するパターン認識アルゴリズム(デコーダー)を構築した。
この結果、睡眠中の人の脳活動にデコーダーを適用することで、見ている夢に現れた物体を高精度に解読できたという。今後は夢の中の色や形などの特徴のほか、体の動きや感情など、より多様な夢内容を解読できるかどうか検証していく。
研究で、脳活動の計測により夢の内容の解読が可能なことを初めて示すことができたとしている。夢を夢の報告は不定形で制御が難しいものだが、言語・画像データベースを使って定量的に扱えるようにしたことが特徴という。
夢の報告内容を「本」や「車」など計約60のカテゴリーに分類。
起きている時にそれらの画像データを見たときの脳活動パターンと、睡眠中の脳活動パターンとを比較した結果、
多くのカテゴリーでパターンが約7割の確率で一致した。
この方法は、夢だけでなく、想像や幻覚の解読や、精神疾患の診断などの分野で応用が期待されるという。
神谷室長は「今回は視覚情報に関する分析だが、夢には行動や感情の要素もあり、
これらも解読が可能か検討したい」と話した。