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10:13 by aceartacademy
source: aqua2ch.net / wired.jp




米マサチューセッツ州にあるタフツ大学の研究者 Michael Levin と Tal Shomra はプラナリアに秘められた驚くべき能力を発見し実験によって証明した。

研究論文:An automated training paradigm reveals long-term memory in planaria and its
persistence through head regeneration


扁形動物のプラナリアは著しい再生能力を持つ。彼らには、人間と比較するとシンプルではあるが臓器や体組織の多く持ち、これらの中には比較的複雑な構造の脳も含まれている。切断した断片から完全に再生することができ、その著しい再生能力のため古くから研究されている。

プラナリアは、淡水と海水の両方の環境で見つかる非常に多様な生き物。彼らには光を感じることの出来る原始的な目を持っている。この目で光を感知し、捕食者から見つからないよう物陰に隠れるのだ。

今回、研究者たちが行った実験はこの目とプラナリアの特性を応用したものである。まず、実験対象となるプラナリアに明るい場所には餌があり安全だということを覚えさせるのだ。それには、コンピューター化された装置を使用しライトで明るく照らした場所にプラナリアが出てきた場合、報酬である餌を与える。それが繰り返し行われる。

本来「明るい場所は危険である」と認識しているはずのプラナリアはこの実験装置によって「明るい場所であっても危険ではなくむしろ餌もあって安全な場所だ」ということを覚えるのだ。

Michael Levin は言う。
「我々は、特殊なレーダーでプラナリアの動きを感知することのできる特殊な装置のついた皿とそこに餌を用意した。入れられた何も知らないプラナリアは周りを大きく旋回し多くの時間を無駄にする。しかし、それとは対照的に教育が施されたプラナリアは一目散に餌へと向かうことが出来る。」


研究チームはプラナリアが餌を見つけることを覚えたことを確認した後、プラナリアの頭を切り落とし、2週間かけて完全に再生させた。そして、切断される前と同じ実験を行った。

すると、そのプラナリアは明るい場所が安全であることを覚えており、餌も安易に見つけ出すことが出来た。

つまり、脳を有する頭部が切断されたのにもかかわらず、頭部の再生したプラナリアは以前の記憶を有していたのだ。

しかし、明確な疑問が残る。
なぜ、頭を失ったのにもかかわらず、それ以前の事を覚えているのだろうか?

「我々にも見当がつかない」
Michael Levin は認めた。

「我々が知っていることはプラナリアの記憶は脳以外の外部で格納することができるということです。体細胞のどこかだと思われます。それが脳の再生と共にアウトプットされ脳に刷り込まれるのだと思います。」

「研究者たちは長い間この研究を規制してきた。しかし、これらの研究結果は他の研究に影響を与え、促進することが出来るかもしれない。我々は近い未来、体細胞にエンコードされた記憶をデコードし得る方法を見つけ出すことが出来るでしょう。」





幹細胞が全身に存在するというプラナリアは、その著しい再生能力から再生医療の研究によく使われてきた。1匹のプラナリアを半分に切断すれば、2匹の完全なプラナリアとなり、2週間ほどでその脳すら完全に再生される。しかしプラナリアの特性は再生能力だけではない。1960年代に行われた研究では、本能的に光を避けるプラナリアでも「光のある場所に餌がある」とトレーニングされた個体は、インプットされた記憶を長期間覚えていることが可能だとされてきた。しかも驚くべきことに、半分に切断後、尻尾から新たな頭部を再生したプラナリアでも、かつてのトレーニングを“覚えている”のだという。ただしそれが事実、「脳から記憶を想起」した結果なのか、光や匂いに対する「条件反射」や「感作」のようなものの影響なのかが明らかにされていなかった。

そこで米マサチューセッツ州タフツ大学のタル・ショムラットとマイケル・レヴィンが、この謎の解明に乗り出した。『The Journal of Experimental Biology』に掲載された論文によると、彼らは数百というプラナリアの環境(温度、時間、水の種類、餌の種類など)を徹底的に均一化し、長期記憶のためのトレーニングもすべて自動化。さらに光による条件反射や感作の影響を極力避けるために、プラナリアをざらついた表面のあるペトリ皿に移し、そのざらついた環境にこそ餌があると学ぶよう、暗闇で10日間のトレーニングを施した。

正しく脳(中枢神経)を使って記憶されているかを調べるテストには、プラナリアの光を避ける習性を逆手に取り、青いLEDライトで餌を照明。ざらついた表面に餌があると知らないコントロールがペトリ皿の縁から動かなかったのに対し、学習した個体は、光を避ける習性があるにもかかわらず、その感触を頼りに餌へと到達した。研究者らは、その記憶が最後のトレーニングから14日間は持続することを確認。その後プラナリアを咽頭前で半分に切断し、頭部の再生後(切断から10~14日後)に長期記憶が残されているかどうかを、餌への到達時間をコントロールと比べることで判断した。

結果は常識的に納得のいくものだ。新たな脳を完全再生したのだから、覚えていないのは当たり前だと思われるだろう。事実、トレーニングを施された頭部再生後のプラナリアと、記憶トレーニングなしのコントロールを比べると、ざらついた表面上にある餌への到達時間はさほど変わらなかった。しかし驚くべき結果はここからだ。

次のシナリオを考えてみてほしい。わたしたちが何かを学習し、忘れてしまったとしよう。だが次に同じことを学ぶ機会があった場合、「そういえばこうだった」と思い出し、学び直すことはいくぶん簡単ではないだろうか?

それと同様、新たな頭部を再生したプラナリアは、コントロールと比べて“再トレーニング”で学ぶ速度が格段に早かったのだ。一度ざらついた表面にある餌を食べさせただけで、新たな頭部をもつプラナリアはあたかもトレーニングを思い出したかのように行動した。この結果は、プラナリアの“記憶”は条件反射や感作によるものではなく、中枢神経の関与を示唆していると同時に、記憶は脳だけにとどまらないことを示している。では、プラナリアはいったいどこから記憶を脳へと“移動させた”のだろう? 

研究者らは「記憶は脳の外にもあるのではないか?」と、推測する。もしかしたら脳など関与していなく、このように複雑な情報を保持できる末梢神経があるのかもしれない。それとも、かつて訓練された末梢神経が再トレーニングにより活性化されたことで、その情報が新たな脳へとインプットされたのだろうか。答えは末梢神経にはない可能性だってある。近年の遺伝子の研究でも示されているように、学ぶことにより発現した体細胞内の遺伝子が、切断後に変化を含んだ中枢神経を再生し、ひょっとするとこれが“記憶”となるのではないだろうか? 

(後略)