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例えばコウモリは超音波を使ってまわりの木の枝や、虫の位置を知ることができる。また、鳩は帰巣本能により1000km以上離れた地点から巣に戻ることができるといわれる。
こういった自分の位置を把握する能力は人間にも備わっているという。我々の脳には人工衛星のような役割を果たす細胞があり、移動の際に稼働して、本格的な三角測量システムのような空間グリッドを形成し、3つの座標を用いてわたしたちがどんな瞬間にどんな環境にいるかを教えてくれるという。
以前から神経科学のさまざまな研究によって、人間の脳にこのような細胞が存在するという仮説は立てられていたが、今回、この細胞が実際に動作しているのが初めて観察された。
米ドレクセル大学、ペンシルバニア大学、UCLA、トーマス・ジェファーソン大学の研究チームは、治療の一環として脳に電極を埋め込んだ14人のてんかん患者に対して研究を行った。
被験者にFPS(一人称視点)のTVゲームをしてもらい、まず、高所から見ていくつかのターゲットの位置を記憶してもらう。次に地上に降りてからジョイスティックを使い、空間を移動してターゲットを見つけ(それも特定の順番で)、基地に戻る(動画参照)。対象は、プレイヤーが近くにいて、それらのある正しい方向を向いているときのみ目に見える。
ゲームの最中、研究者たちはいくつかの細胞が稼働して、ひとつの精確な空間図を形成しているように見えることを観察した。まさに、三角測量で用いる三角網のようなグリッドだった。このグリッドは大脳皮質のさまざまな部位、とりわけ嗅内皮質(記憶のために重要で、アルツハイマー病に関係する海馬の一領域)や、帯状皮質の前部および後部に存在している。
「こうした細胞は、閉じた場所でも開けた環境でも、方向感覚を維持するうえで根本的であるように思われます。グリッドとなる細胞なしでは、おそらく人間は目印のみに基づいて動き回ることになるでしょう。」、「新しい発見は、特定の場所において活性化する海馬の位置特定細胞についてのこれまでの発見とともに、さまざまな種類の哺乳類がもっている地図やナビゲーションシステムの存在の証拠となります。」論文の著者のひとり、マイケル・カハナ氏は語る。
イタリア、トリエステの先端研究高等学院(SISSA)のある研究では、海馬における空間記憶が小グループで機能することをすでに発見していたし、多くの研究者たちが以前から方向把握能力の発達を研究している。